はじまりのうた BEGIN AGAIN

はじまりのうた Begin Again

本当に素敵な作品です。

ジョン・カーニー監督の「ONCE ダブリンの街角で」、
なんといっても音楽が魅力的なのです。
この作品も「きっと好きだろうな」と思って観ましたら、やはり好きでした。

ニューヨークの街角が録音スタジオになって、
暇をもてあましている皆で演奏し録音する姿が、実に楽しくて。

あとプレイリストを交換して、街中で一緒に聴くシーンもいいですね。

仕事、人間関係、家庭生活、上手くいかないこと。
認めて、何か小さな行動を起こすと、少し変わっていく。
何度も繰り返していくと・・・。
それを奇跡と呼ぶのかもしれません。

<はじまりのうた BEGIN AGAIN>
様々な問題を抱える人々が音楽を通じて運命を切り開く姿を描く人間ドラマ。
彼氏に裏切られ、ライブハウスで歌う失意のグレタ。
居合わせた落ちこぼれの音楽プロデューサー・ダンとの出会いが、デビューの話へと発展するが…。
(「キネマ旬報社」データベースより)

出演:キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ
監督: ジョン・カーニー

2016年4月12日の感想

グランド・ブダペスト・ホテル The Grand Budapest Hotel

グランド・ブダペスト・ホテル Grand Budapest Hote

高級ホテルのコンシェルジュと彼を慕うベルボーイが繰り広げる冒険を描いた群像ミステリー。

一度観た後、「気になった場面を再確認」という行為を何度もしてしまう程、
観るところ満載の素晴らしい作品でした。

ストーリーは非常にテンポが良く、画面サイズを時代ごとに変える工夫と面白さ、
風景・構図・色彩の美しさ、音楽の選択の良さ、とっても好きです!

有名俳優たちが多く出演していますが、だらだら出演し続けることはなく、
適材適所で、それぞれビシッと決まっています。

ウェス・アンダーソン監督なので、建物、地図や室内の図面、乗り物、
調度品などのインテリア、食器、小物、衣装、ヘアスタイル、
あらゆるところにこだわりの品々が・・・。
本当に素敵なのです。

アカデミー賞で、その手の賞をほとんど受賞したのも納得です。
おそらく一度観ただけでは、全てを観ることは不可能なのではないかと思います。

ミステリー、冒険、コメディーというカテゴリーをまたぐような作品です。
戦争により人生が変わり亡くなっていった人々への祈り、
育った環境や価値観や血縁を超えた師と弟子との関係、
古くなり廃れ、誰も関心を寄せなくなった時代へと注がれる愛。

とっても素敵な作品でした。

<過去関連記事>
ムーンライズ・キングダム:Moonrise Kingdom 2013年1月28日 →こちらです

<ウェス・アンダーソン(Wesley Anderson)の他の作品>
「アンソニーのハッピー・モーテル」(Bottle Rocket)
「天才マックスの世界」(Rushmore)
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(英: The Royal Tenenbaums)
「ライフ・アクアティック」(The Life Aquatic with Steve Zissou)
「ホテル・シュヴァリエク」 (Hotel Chevalier)(13分の短編)
「ダージリン急行」(英: The Darjeeling Limited)
「ファンタスティック Mr.FOX」(原題: Fantastic Mr. Fox)
「ムーンライズ・キングダム」(Moonrise Kingdom)

2015年4月4日の感想

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ Only Lovers Left Alive

オンリー・ラバーズ・レフト・アライヴ Only Lovers Left Alive

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

お休み中は、のんびり過ごしました。
ゆったりとした時の流れ・・・こちらの映画をご紹介します。

現代に生きる吸血鬼の物語。
トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン(二人とも非常に美しい)、
現代の人間よりも人間的な、趣味や生き方。
それぞれ別の場所で、まったりとした日々を過ごしています。
そんな生活を観ている時間は、なんとも心地良かったりするのです。

彼らの穏やかな安定した生活は(おいおい壊れていくのですが)、
消えゆくであろう美しい風景、荒廃したかつて美を誇った建物、
時代とともに作られなくなり、聴く人も少なくなった音楽・レコード・楽器
(「YouTube」で聴くと言われてしまったり)に似ています。
最近では、書店で本も売れなくなってきているようですので、いずれは・・・。

ゆったり流れる時間の贅沢さ。

吸血鬼物というジャンルになるのでしょうが、
全く怖くはありませんので、怖さは期待しないでくださいね。
何が起こるという話でもないのですが、とても好きです。

絶滅してしまいそうなもの、こういう映画作品も含まれるのかもしれませんが、
なくならないで欲しいなと思うのです。

<オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ Only Lovers Left Alive>
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ジョン・ハート、ミア・ワシコウスカ

ジム・ジャームッシュ監督が描く吸血鬼のラブストーリー。
謎のカリスマミュージシャン・アダムは今を生きる吸血鬼。永遠の恋人・イヴと久々の再会を果たした彼は、穏やかで堕落した悦楽の日々を過ごしていたが、突然イヴの破天荒な妹・エヴァが現れ・・・。(「キネマ旬報社」データベースより)

2015年1月5日の感想

ホーリー・モーターズ Holy Motors

ホーリー・モーターズ Holy Motors

MERRY CHRISTMAS

昨夜は、キリスト生誕を教会で祝う夜、クリスマスイブ、聖夜=holly nightでした。

Holy繋がりで、こちらの作品をご紹介します。
「Holy Motors」です。 Motorは、自動車、原動力、です。

レオス・カラックス監督の分身ともいえるドニ・ラヴァンのカメレオンぶり。
さすが役者だな~と。

彼の役者ぶりは見事ですが、私たちも日頃、社会生活を送る中で、
いろいろな仮面・ペルソナを被って生活しているのかもしれませんね。

大好きな監督の13年ぶりの作品というだけで、ワクワクしました。
世間的評価はそれぞれでしょうが、素晴らしい作品だと思います。

<ホーリー・モーターズ Holy Motors>
監督・脚本:レオス・カラックス
製作:マルティーヌ・マリニャク、モーリス・タンシャン
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ、イヴ・カープ
出演:ドニ・ラヴァン、エディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、ミシェル・ピコリ
音楽:ニール・ハノン(ザ・ディヴァイン・コメディ)、スパークス、カイリー・ミノーグ、R.L.バーンサイド他

白いリムジンに乗り、次々と別の人格(富豪の銀行家、殺人者、物乞いの女、父親など)に変身しながら、パリの街を走り回る男の不思議な1日を描いた。
レオス・カラックス監督が「ポーラX」以来13年ぶりに手掛けた長編。
主演は「アレックス3部作」(「ボーイ・ミーツ・ガール」「汚れた血」「ポンヌフの恋人」)で主人公を演じたドニ・ラヴァン。

2014年12月25日の感想

追記

2022年12月クリスマスの月を迎えました。
全国的に電力不足となり、東京で暮らす私たちにとっても節電の冬となりそうです。

ヨガ教室内はコロナ対策でもある換気をしています。
暖房を入れつつの換気になり、少し寒く感じることもあるやもしれず。
恐れ入りますが、上着やレッグウォーマーや靴下などお持ち頂けますと助かります。
ヨガで元気にのりきっていきましょう。2022年12月4日記

パシフィック・リム Pacific Rim

パシフィック・リム Pacific Rim

皆様、お盆は、いかがおすごしでしょうか。

面白い映画作品を観ました。
子供の頃に観ていた、ロボット・アニメが実写になった!
怪獣がリアルに動いている!

ワクワク・ドキドキですね。

「パンズ・ラビリンス: El laberinto del fauno」のギレルモ・デル・トロ監督の、
2013年8月に公開された(ちょうど昨年ですね)、SF怪獣映画です。
「巨大ロボット 対 怪獣」のオリジナル作品です。
大ざっぱなくくりですが、その通りだったりします・・・。

「パンズ・ラビリンス」は、物語、造形美ともに実に素晴らしい作品で大好きですが、
「パシフィック・リム」は、「パンズ・ラビリンス」に比べると、心理的な重厚感はありませんが、
「まあそれでいいか」と思うほど、ワクワク・ドキドキに満ちています。

主人公ローリー役は、チャーリー・ハナム。
日本のアニメでは、主人公は中肉中背、精神的に不安定な少年という感がありましたが、
けっこう筋肉質でたくましく、意志が強い。そして少年ではなく、青年でした。
こういう主人公の方が、海外では共感を持たれやすいのかもしれませんね。

以前、チャールズ・ディケンズの「二コラス・ニックルビー」のニコラス・ニックルビー役でした。
最近では、テレビドラマ「Sons Of Anarchy」というバイク乗りを演じているようです。

菊地凛子がヒロインのマコ役、子供時代を芦田愛菜が演じています。
なんだか嬉しいですね。メキシコ監督同士(chachacha)のネットワークなのでしょうか。

監督お気に入りの役者、ロン・パールマン、ここでもイイ味だしてます。
(「ロストチルドレン」、「ヘルボーイ」は、今となっては彼以外考えられません。)

ステレオタイプではありますが、この作品の若いふたりの科学者も、
マッドサイエンティストです。実際いたら困るけど、必要なキャラですね。

昭和のロボット・アニメ、怪獣映画好きにはたまらない作品です。
よかったらご覧くださいませ。

エンドロールまで楽しませてくれますよ~。

<パシフィック・リム Pacific Rim>
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:トラヴィス・ビーチャム、ギレルモ・デル・トロ
原案:トラヴィス・ビーチャム
製作:ジョン・ジャッシニ、メアリー・ペアレント、トーマス・タル
製作総指揮:カラム・グリーン

出演者:
チャーリー・ハナム
菊地凛子
イドリス・エルバ
チャーリー・デイ
ロバート・カジンスキー
マックス・マルティーニ(英語版)
ロン・パールマン
芦田愛菜

音楽:ラミン・ジャヴァディ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
編集:ピーター・アムンドソン
製作会社:レジェンダリー・ピクチャーズ

2014年8月16日の感想

別離 ナデルとシミン Nader and Simin, A Separation

別離 A Separation

より良い道を選んでいると信じたいし、選びたい。
けれど、そう思うようにいかないことが、時としてある。

ひとりひとりが、より良く生きようと考えて行動しているのに、空回り。
さらに、周囲を巻き込んで、悲しい循環に陥っていきます。

イラン人の主人公や周囲の人物を、イスラムという宗教や文化は違うのですけれども、
「もしも自分だったら・・・」と置き換えて考えてみますと、
「そういうこと、あるかもしれない」と妙に納得してしまうのです。

そもそも立場が違うということは、利害が一致しないのですから、
和解するということは、非常に難しいわけです。

観ている最中、もやもやした気持ちが晴れることはなく、
観終わった後も、実はほとんど晴れていません。そんな苦しい作品だったりします。

誰も意図していないにも関わらず、結果的には、誰にとっても辛い状況になってしまう。
そんな状況に対して、アスガー・ファルハディ監督は、あえて明確な答えを出しません。

作品では、様々な別離が描かれています。
夫婦、男女、親子、雇用主と使用人、宗教が社会を決める昔の文化と法律が社会を決める現代のイスラム・・・。

「自分だけは悪くない」というエゴのようなものに翻弄されがちです。
誰もが持っているこういう気持ちを手放した時に、
私たちはより良い方向へ進むことができる、と言いたいのかな、と。

そして、「カルマ・ヨガ」をふと思いました。

カルマヨガとは、マットの上でのヨガというよりも、生き方です。
行為の結果に対する思いを放棄し、見返りを求めず私心を交えず行為すること。

<別離 ナデルとシミン Nader and Simin, A Separation  さわりのあらすじ>
テヘランで暮らす妻シミンは、11歳になる娘テルメーの将来のことを考えて、夫ナデルとともにイランを出る準備をしていた。
しかしナデルは、アルツハイマー病を抱えることとなった父を置き去りにはできないと国を出ることに反対。夫婦の意見は平行線をたどり、シミンが裁判所に離婚申請をするが、協議は物別れに終わる。
シミンはしばらく家を出ることとなり、ナデルは父の世話のためにラジエーという女性を雇うことにした。
しかし、ある日、ナデルが帰宅すると、父は意識不明でベッドから落ち床に伏せていた。
ナデルは怒りをあらわにして、ラジエーを問い詰め、彼女を手荒く追い出してしまう。
その夜、ナデルは、ラジエーが入院したとの知らせを受ける。

<別離 ナデルとシミン Nader and Simin, A Separation 出品受賞>
第61回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品。
最高賞である金熊賞と、女優賞、男優賞の2つの銀熊賞の計3部門で受賞。
第84回アカデミー賞で、イラン代表作品として外国語映画賞を受賞。脚本賞にもノミネート

2013年8月7日の感想

ムーンライズ・キングダム Moonrise Kingdom

ムーンライズ・キングダム Moonrise Kingdom

映画の試写会に誘ってもらい、久しぶりに大きな画面で観てきました。

不思議な形の家、システマチックなキャンプ場、教会の建物の構造やインテリアが凝っています。
「こんな家、住みたいな」と思うほど。主人公の少女は物質的には何自由なく暮らしていますが
家族や学校の人間関係などに嫌気がさして、家を出てしまいます。

もう一人の主人公の少年は、ボーイスカウトなので、サバイバル知識を駆使して
(時には、役に立たなかったり)、少女を守ろうとする姿がいじらしい。

風景、インテリア、役者たちの着ている服、小物、映画全体の色使いがどこか懐かしく
なんともいえず可愛いのです。カメラの動きが妙に心地良くてテンポがイイ。
こういう作品、大好きです。

ウェス・アンダーソン(Wesley Anderson)監督の作品は、
割と淡々と物語が進んでいく作品が多いのですが、この作品は珍しいくらい、ドラマチック。

おそらく「この島は、あと3日で破壊的な台風が直撃」というリミット、
追う追われるという人間模様、なにより打算のない若者の愛がテーマだからなのかもしれません。
既に大人になった者にとって(自分も含めて)、甘酸っぱく感じますね。
そんなわけで、彼らの行動は、人生を諦めかけた大人たちに変化を起こしていくのです。

少年少女を囲む出演者も非常に豪華で楽しめます。

「少女がキャンプや山登りにスカート姿」というのは、どうかと思いますが、
駆け落ちだから、トレーニングパンツよりも女子っぽさをアピールできて良いのかも。

とっても面白くて、お勧めです。

<ムーンライズ・キングダム Moonrise Kingdom>
1960年代のニューイングランド島を舞台に、少年少女が駆け落ちする。
彼らを追う保安官と少女の両親やボーイスカウトのリーダー、そしてボーイスカウトたち。

監督・脚本・製作:ウェス・アンダーソン
共同脚本:ロマン・コッポラ
キャスト:ブルース・ウィリス、エドワード・ノーン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・シュワルツマン、ボブ・バラバン ほか

<ウェス・アンダーソン(Wesley Anderson)の他の作品>
「アンソニーのハッピー・モーテル」(Bottle Rocket)
「天才マックスの世界」(Rushmore)
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(英: The Royal Tenenbaums)
「ライフ・アクアティック」(The Life Aquatic with Steve Zissou)
「ホテル・シュヴァリエク」 (Hotel Chevalier)(13分の短編)
「ダージリン急行」(英: The Darjeeling Limited)
「ファンタスティック Mr.FOX」(原題: Fantastic Mr. Fox)

2013年1月28日の感想

ブンミおじさんの森 Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives

ブンミおじさんの森 Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives

アピチャートポン・ウィーラセータクン監督・脚本・製作のタイ映画。

この森では、どうやら過去や現在や未来の境がなくなり、生者と死者の境がなくなるようです。

病気で死を目前にしたブンミおじさん。日常ではありえない出来事が、当たり前のように起こります。

あまりネタバレしない方が良さそうな作品なので、多くを語るのを控えますが、見終わって「?」で頭がいっぱいになりました。観る人それぞれに、テーマやメッセージを違って受け取ることができる、深読みしだすときりがない、いやそれとも、そこまで考えなくていいのだろうか?

人の手の及ばない森という自然。また、人が生きることや人が死ぬことといった自然の摂理。そんな自然や自然の摂理の中では、人はとてもか弱い存在です。人の手の加わっていない森、人よりも長く存在し続けている、やけに湿度の高そうな森の見事さ。観た人それぞれの解釈や感想を聞いてみたい作品です。ご覧になったら、教えてくださいね。

夏を都会である東京で過ごしている私にとって(たまには「ブンミおじさんの森」のような自然の中で過ごしたいものです。そういう意味では、タイの森にいるような感覚を味わえる癒しの映画かも)、「仏教が熱心に信仰されているタイでは、こんなこともあるかもしれないな」「死んだら・・・」なんて、夢なのか現実なのか、前世なのか現世なのか境目が不確かなまま、蒸し暑い中、漂うような時間を過ごしました。

「筋書き」とか、「結末」とか、この作品の中では、あまり重要じゃないのかもしれません。全体的に画面が暗いので眠くなるかもしれませんが、決してつまらない作品でも、退屈な作品でもありません。

森の中をゆらゆらと漂いたくなったら、どうぞ。

<ブンミおじさんの森 Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives>
監督&脚本&製作:アピチャートポン・ウィーラセータクン
製作:サイモン・フィールド
   :キース・グリフィス
   :シャルル・ド・モー

第63回カンヌ国際映画祭で、タイ映画史上初めてパルム・ドールを受賞。この時の審査委員長はティム・バートン監督。つまり彼の好みということです。ティム・バートン作品は、常に結末が用意されていますが(普通の映画作品では当たり前のことですけども)、「こういった味わいの作品も好きだったのだなぁ」と思いました。

2012年8月22日の感想

追記
名前の日本語発音表記は、アピチャッポン・ウィーラセタクンが最も近いようです。愛称は、ジョーさんです。

2020年、多摩美術大学特任教授。日本ともご縁ある映画監督です。
2021年、「MEMORIA メモリア」(ティルダ・スウィントン主演)が第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、審査員賞を受賞。

まさか「ブンミおじさんの森」を観た8年後の2020年、タイのドラマにハマり、浴びるようにタイ語を聞くことになるとは思ってもいませんでした。何が起こるかわからないものですね。2022年11月27日記

ミスター・ノーバディ MR.NOBODY

ミスター・ノーバディ MR.NOBODY

2092年の近未来を舞台に、運命が次々と変わっていく男の人生を描いたSF作品。

久しぶりに面白い映画(WOWOW録画)を観ました。
人生は日々選択です。たった1つの道を選んで生きてくわけですが、選ばなかった選択肢はそれこそ無数です。主人公である118歳の老人ニモは、1つの道を選べず、だからこそ無限に広がり、誰でもない存在になってしまいました。

映像が非常に綺麗で凝っています。編集に時間をかけたとのことで、場面と場面の切り替わりが、とってもユニーク。今まで観た他の映画作品の印象的な場面が、別の時空・物語に繋がって広がり、まるで迷宮に迷いこんでしまったかのようです。

「アナとオットー ANA+OTTO:Los Amantes del Circulo Polar」(好きな作品のひとつ。スペイン映画、バスク地方出身の監督フリオ・メデムの作品。フィンランド・ヘルシンキの百夜、画面全体に漂う透明感のあるブルーが印象的。フェレ・マルティネスとナイワ・ニムリ出演)や「バタフライ・エフェクト:The Butterfly Effect」に雰囲気が似ているかもしれません。

「レクイエム・フォー・ドリーム:Requiem for a Dream」に出演していた、吸い込まれそうな瞳のジャレッド・レトーがニモを演じてます。彼の目力は尋常じゃないですね。

レクイエム・フォー・ドリーム
この瞳!

少し話はそれますが、「レクイエム・フォー・ドリーム:Requiem for a Dream」は、2009年のイギリスの映画雑誌「エンパイア」が発表した「落ち込む映画」ランキング第1位!

確かに落ち込む要素満載で、薬物中毒に陥った人々の悲惨な物語です。
あまりの恐ろしさに、観た人は、おそらく薬物には手がでないと思われます。「中学・高校・大学などの授業で、強制的に観せると良いのでは?」と個人的には思うのですけど、いかがでしょうか。ちょっと刺激が強いかなぁ。

「ミスター・ノーバディ」に戻ります。
137分間、飽きることなく、ありえないような、ありえるような(どっちなんだ~)、摩訶不思議な世界に連れて行ってくれます。
自分の選んできた道が、最良だと信じたいものですよね。

<ネタバレなしのあらすじ>
不死が実現した未来で、死を迎える最後の人間となった主人公。彼はありえたかもしれない幾多の人生を語り出す。奇才J・V・ドルマル監督が放つ異色のSFファンタジー。寡作だが作品ごとに世界的な評価を高めるJ・V・ドルマル監督が、「八日目」以来13年ぶりに発表した長編第3作。(WOWOWより抜粋)

監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
出演:ジャレッド・レトー、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー
   リン・ダン・ファン、リス・エヴァンス、ナターシャ・リトル

2012年6月18日の感想

<薬物依存症とは>
薬物依存症は国際的に認められている精神障害のひとつです。
覚せい剤・シンナー・大麻などの依存性のある薬物を使いつづけているうちに心身に異変が生じ、薬物を使いたいという気持ちが強くなりすぎて、自分ではコントロールできなくなり、現実にいろいろと不都合が生じているにもかかわらず薬物を使いつづけてしまう障害です。

精神科での治療。人生をかける根気のいる治療になります。
またヨーガセラピーも役立つといわれています。

軽い気持ちではじめた若者や薬物とは縁遠かった人々の薬物中毒の恐ろしさをこれ程までに描いた作品は、「レクイエム・フォー・ドリーム」がダントツです。2022年11月26日記

ベニスに死す DEATH IN VENICE

ベニスに死す DEATH IN VENICE
ベニスに死す DEATH IN VENICE
ルキーノ・ヴィスコンティ Luchino Visconti

かつて南池袋にあった小さな地下の映画館「ACTシアター」
(正式名称:ACT SEIGEI THEATER)を憶えていますか。
西早稲田のACTミニ・シアター(経営は同じだったようです。うーん、懐かしい。
ちなみに赤坂のACTシアターではありません。)

学生時代、こちらでデレク・ジャーマンにはまり、
そして、ルキーノ・ヴィスコンティの「ベニスに死す」「地獄に堕ちた勇者ども」を観て、
タッジオ少年の完璧なまでの美しさに、すっかりやられてしまいました。

美をつくり出すものが美しいかというと、そうでもなく(そういうこともありますが)、
美をつくり出すこともなく、また美について思考しなくても、
その者の存在がすでに「美」そのもの、ということがある。
創作活動をしている全ての人間は、この種の存在に激しく憧れながらも、
その存在にはけっしてなり得ず、なんて遠いんだろうと強烈に感じました。

この名作が、ニュープリントになって銀座テアトルシネマで再上映です。

「水の都ベニスで、至高の美少年に魅せられた芸術家の苦悩と恍惚。
マーラー交響曲第5番アダージェットに永遠の輝きを与えた、
巨匠ヴィスコンティの最高傑作であり、総合芸術の頂点。」(HP抜粋)

キャッチコピーは、「美は滅びない」です。

タッジオ役のビョルン・アンドレセンの輝きをぜひご覧くださいませ。

2011年10月17日の感想

2019年ホラー映画「ミッドサマー」では老人役で出演しました。
2021年の「世界で一番美しい少年(The Most Beautiful Boy in the World)」がサンダンス映画祭で発表されました。
この作品は、ビョルンの人生を描いたドキュメンタリーです。
ヴィスコンティ監督や祖母、大人たちに性的搾取されてきたことを告発。
人間不信に陥っていたため、撮影承諾までに3年を要したとのこと(wikiによる)

フィルムでの輝きと実生活での辛い経験がまるで光と影。
なんとも言えない気持ちになりました。
それでも彼を素晴らしいと思う私のような人間もいるわけでして。
おこがましいけれど、彼にとっての良い人生を陰ながら祈っています。2022年11月24日記