トラウマをヨーガで克服する デイヴィッド・エマーソン、エリザベス・ホッパー、伊藤久子(訳)

トラウマをヨーガで克服する デイヴィッド・エマーソン
トラウマをヨーガで克服する
デイヴィッド エマーソン David Emerson(著)
エリザベス ホッパー Elizabeth Hopper(著)
伊藤久子 (翻訳) 紀伊國屋書店

皆様は、トラウマ・センシティブ・ヨーガというものをご存知でしょうか。

心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、Posttraumatic stress disorder:PTSD)に有効なヨーガで、米国マサチューセッツ州ボストンのトラウマセンターで研究・開発・実践されているヨーガです。

PTSD治療は現在、精神療法においては認知行動療法が主流で、長期持続暴露(Exposure:暴露法:トラウマ体験を話すこと)が行われています。また薬物療法では、薬物(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が行われています。精神生理学的治療では、EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理)が行われています。

強烈な外傷体験 (traumatic experience) が精神に、肉体に刻み込まれ、PTSDとなります。その体験は過去のことですが、現在も起こっているかのように頭の中で何度も繰り返すという苦しみがあります。

そこで、ヨーガは脳の側からの指令ではなく、肉体の側から、「今ここにいる」という感覚を得ることで、トラウマ体験を話すことなく解放されていく、と説いています。

トラウマ・センシティブ・ヨーガは、まだ日本では認識されていないかもしれませんが、今後の可能を感じました。トラウマ・センシティブ・ヨーガと教室で行っておりますハタヨガは、少し違いがありますが(現在学んでいますヨーガ療法とは非常に似ています)、ヨーガがトラウマの治療にも役に立つということは嬉しいことです。

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講習会に参加いたしました。(開催日2012年9月27日、記事2012年10月1日)
ボストン・トラウマセンターにおけるヨーガ療法講習会~トラウマ・センシティブ・ヨーガ講習会~に参加して、こちらです

<ボストン トラウマセンターについて>
ベッセル・A・ヴァン・デア・コーク氏(研究、臨床医としてトラウマに関わっている)によってトラウマセンターは設立されました。慢性的・複合的トラウマや、心の傷を負った人たちを治療するクリニックで、PTSDなどの幅広い研究を行ない、災害、戦争、虐待、犯罪などのトラウマ被害者への支援方法を研究・開発・実践する世界的拠点となっています。デイヴィッド・エマーソン氏はこのセンターでヨーガ部門長として治療にあたっています。エリザベス ホッパー氏はトラウマ療法を専門とする臨床心理士です。

2012年9月29日の感想

トラウマ・センシティブ・ヨガ

ボストン・トラウマセンターにおけるヨーガ療法講習会
「トラウマでヨーガを克服する」の著者デイヴィッド・エマーソン氏による
トラウマ・センシティブ・ヨーガ講習会

トラウマ・センシティブ・ヨーガの講習会に参加いたしました。(ずいぶん長い名前の講習会ですよね。タイトルの枠の中におさまりきらない程の長さです。)

米国のボストンにはトラウマセンターという施設があり、トラウマを抱えた人々が治療を受けています。

デイヴィッド・エマーソン氏の講演、実習、質疑応答。本で読むこともひとつの勉強ですが、ヨーガがどのように有効であるか、何を大切にしているか、米国で一般的に行われているヨーガとトラウマ・センシティブ・ヨーガの違い、試行錯誤された体験談なども交えた直接指導は本当に貴重ですね。朝9時から夕方4時半まで、充実した講習会でした。ボストン・トラウマ・センター発行の修了証を頂きました。

会場では、「ヨーガ療法」を共に学んでいる仲間に出会い、またインドに一緒に旅した仲間や以前のヨガ教室で学んだ仲間にも思いがけず出会い、とても嬉しかったです。ヨガを続けていると、こうしてまた出会えるものなのですね。帰りに仲間とお茶や夕食でほっと一休みした後は、またヨガの練習に行きました。ヨガ漬けの長い1日でした。

トラウマヨガ研修
デイヴィッド・エマーソン氏、「ヨーガ療法」の木村慧心先生をかこんで(2012年9月27日)

<デイヴィッド・エマーソン氏>
ベッセル・A・ヴァン・デア・コーク氏によって設立された米国ボストンのトラウマセンターで慢性的・複合的トラウマや、心の傷を負った人たちを治療するクリニックでヨーガ治療にあたっていらっしゃるヨーガ教師。「ヨーガでトラウマを克服する」の著者。
「ヨーガでトラウマを克服する」、本の紹介こちらです

<PTSD>
危うく死ぬまたは重症を負うような出来事の後に起こる、心に加えられた衝撃的な傷が元となる、様々なストレス障害を引き起こす疾患のことである。心的外傷後ストレス障害は、地震、洪水、火事のような災害、または事故、戦争といった人災や、テロ、監禁、虐待、強姦、体罰などの犯罪など、多様な原因によって生じうる。

精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。
トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。
事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる追体験(フラッシュバック) など。

<トラウマ・センシティブ・ヨーガ>
ベッセル・A・ヴァン・デア・コーク氏が創設した、米国ボストンのトラウマ・センターで開発されたヨーガ。

2012年10月1日記