鹿の王 上橋菜穂子

鹿の王 上 上橋菜穂子鹿の王 下 上橋菜穂子
鹿の王 上橋菜穂子 KADOKAWA

皆様、いかがおすごしでしょうか。
夏休みを楽しまれましたでしょうか。それともこれからでしょうか。

私は「鹿の王」で、野や山や森を駆け抜けてきました。

まず描かれている世界観に圧倒されます。
それぞれの土地の持つ個性豊かな風土や風俗に魅せられます。
人種も考え方も異なる二人の主人公と彼らをめぐる人々。
感じ方や考え方の異なる多種多様な登場人物たちを、
あえて善悪に分けることをしないため、物語が多層的に広がるのです。

統治する者と統治される者、生き物と人間、肉体と魂、健康と病、
自然がもたらすものと人の手によるもの、医療と宗教。

私たちの体内、防御し生きようとする存在、攻撃し死をもたらす存在、
その中でまた別にバランスを取りつつ共に生きている存在。
これは、体内で起こっている免疫のみならず、
自然界のいとなみ、社会のシステムに通じているなぁ、と。

立場の弱い者に愛情を持ちつつ、かつ公平な目で見る事の大切さ。
時に共感し、時に疑問を持ち、考えて・・・。

守り人シリーズとはまた違う、味わい深い作品でした。
ただいま「鹿の王」という旅から戻り、ほっと一息、という心境です。

<上橋 菜穂子(うえはし なほこ)>
1962年7月15日 東京都生まれ。文化人類学者。児童文学作家、
ファンタジー作家、SF作家、文化人類学者。日本児童文学者協会会員。

「精霊の木」「月の森に、カミよ眠れ」「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」「虚空の旅人」
「神の守り人 <上> 来訪編」「神の守り人 <下> 帰還編」「蒼路の旅人」
「天と地の守り人 <第1部> ロタ王国編」「天と地の守り人 <第2部> カンバル王国編」
「天と地の守り人 <第3部> 新ヨゴ皇国編」「流れ行く者 守り人短篇集」
「炎路を行く者 守り人作品集」「獣の奏者」「物語ること、生きること」
「明日は、いずこの空の下」「三人寄れば、物語のことを」など

<過去関連記事>
Arco Iris Yoga 2014年4月7日 精霊の守り人 上橋菜穂子→こちら

2015年8月17日の感想

追記
その後
2014年ラジオドラマ化。
2019年3月27日続編小説「鹿の王 水底の橋」発売。
2022年2月4日劇場アニメ映画「鹿の王 ユナと約束の旅」公開。

映画は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて2度延期されました。
新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)のある世界を経て、
この作品の描く世界がより身近に感じられるようになりました。
小説が現実よりも先に、映画に関しては現実とシンクロする作品となりました。2022年11月12日記