Q:A Night At The Kabuki NODA・MAP@東京芸術劇場プレイハウス

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Inspired by A Night At The Opera
作・演出 野田秀樹 音楽 QUEEN

クイーン「オペラ座の夜」をベースにした芝居を観ました。

この芝居が企画されたのは2年前、
映画「ボヘミアン・ラプソディ」現象が起こる前とのこと。
最初、「二番煎じになるのでは」と心配しましたが、全くの杞憂に終わりました。

久しぶりの劇場での観劇でしたので、それ自体が嬉しく、
クイーンの音楽と物語がとても良く合っていたこと、
生身の人間が演じるという芝居の面白さを存分に感じることができたことで、
良い芝居を観た時に味わう余韻に、どっぷりと浸っています。

ウィリアム・シェークスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」を下敷きに、
日本の源平の戦乱の世に置き換え、さらに時代は第二次世界大戦のシベリアにスリップする。

2組のロミオ(上川隆也、志尊淳)とジュリエット(松たか子、広瀬すず)を軸に、
私たちが今生きている世界にあふれている不寛容さや、
不寛容さゆえに壁をつくることの愚かさを描いていました。
壁は、建造物的な壁というだけでなく、もちろん心理的な壁でもあります。

いつも通り、見立てや道具遣いが面白く、
台詞も早いのですが、リズムがあって楽しく、ひねりがあり、
役者、アンサンブルのチームワークも素晴らしかったです。

今作は、野田作品の中では、かなりストレートでわかりやすい作品でした。
クイーンのアルバム「オペラ座の夜」をベースにした、
音楽劇・ロックオペラという性格からなのかもしれません。

わかりやすいからといって、観た後の爽快感はなく、
観た後、やはりモヤモヤしてしまいました。
今もまだモヤモヤは晴れることがありません。

それは嫌なモヤモヤではないんです。
芝居が終わって日常に戻っても、ずっと問いかけ続けます。
自分は何か誰かに対して不寛容ではないか、壁をつくってはいないかと。

野田作品は、すぐに答えが出て、すっきりさっぱり終わるものを表現しているのではない。
つど自分に問いかけてくる、終わりのない作品。
素晴らしい作品だったと思いつつ、それだけで終わらせてはいけないな、とも思うのです。

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<出演>
松たか子 上川隆也
広瀬すず 志尊淳
橋本さとし 小松和重 伊勢佳世 羽野晶紀
野田秀樹 竹中直人