トラウマ・センシティブ・ヨガ

ボストン・トラウマセンターにおけるヨーガ療法講習会
「トラウマでヨーガを克服する」の著者デイヴィッド・エマーソン氏による
トラウマ・センシティブ・ヨーガ講習会

トラウマ・センシティブ・ヨーガの講習会に参加いたしました。(ずいぶん長い名前の講習会ですよね。タイトルの枠の中におさまりきらない程の長さです。)

米国のボストンにはトラウマセンターという施設があり、トラウマを抱えた人々が治療を受けています。

デイヴィッド・エマーソン氏の講演、実習、質疑応答。本で読むこともひとつの勉強ですが、ヨーガがどのように有効であるか、何を大切にしているか、米国で一般的に行われているヨーガとトラウマ・センシティブ・ヨーガの違い、試行錯誤された体験談なども交えた直接指導は本当に貴重ですね。朝9時から夕方4時半まで、充実した講習会でした。ボストン・トラウマ・センター発行の修了証を頂きました。

会場では、「ヨーガ療法」を共に学んでいる仲間に出会い、またインドに一緒に旅した仲間や以前のヨガ教室で学んだ仲間にも思いがけず出会い、とても嬉しかったです。ヨガを続けていると、こうしてまた出会えるものなのですね。帰りに仲間とお茶や夕食でほっと一休みした後は、またヨガの練習に行きました。ヨガ漬けの長い1日でした。

トラウマヨガ研修
デイヴィッド・エマーソン氏、「ヨーガ療法」の木村慧心先生をかこんで(2012年9月27日)

<デイヴィッド・エマーソン氏>
ベッセル・A・ヴァン・デア・コーク氏によって設立された米国ボストンのトラウマセンターで慢性的・複合的トラウマや、心の傷を負った人たちを治療するクリニックでヨーガ治療にあたっていらっしゃるヨーガ教師。「ヨーガでトラウマを克服する」の著者。
「ヨーガでトラウマを克服する」、本の紹介こちらです

<PTSD>
危うく死ぬまたは重症を負うような出来事の後に起こる、心に加えられた衝撃的な傷が元となる、様々なストレス障害を引き起こす疾患のことである。心的外傷後ストレス障害は、地震、洪水、火事のような災害、または事故、戦争といった人災や、テロ、監禁、虐待、強姦、体罰などの犯罪など、多様な原因によって生じうる。

精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。
トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。
事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる追体験(フラッシュバック) など。

<トラウマ・センシティブ・ヨーガ>
ベッセル・A・ヴァン・デア・コーク氏が創設した、米国ボストンのトラウマ・センターで開発されたヨーガ。

2012年10月1日記

野口整体 病むことは力 金井省蒼

野口整体 病むことは力 金井省蒼
野口整体 病むことは力 金井省蒼 春秋社

「病気とは、心の苦しさを、病気を通じて出しているということなのです。病気をして弱ったとはみていないのです。病気も健康法のうちだ。野口先生は「病気になるのも、治るのも通して一つの自然の力です」と言っている。」(本より引用)

金井省蒼さんという、野口晴哉先生のお弟子さんの整体師の方が書いた本です。

様々なタイプの整体師さんが世の中にはいらっしゃるものですが、全面的に心をオープンにできる整体師さんは、受ける側からすると非常にありがたい存在ですね。対話を大切にしていらっしゃるからでしょうか。

おっしゃっている事がヨガと通じることが多くあり、ストンと腑に落ち、時に自分を振りかえり反省も。

自分自身の心と体を観察していく。そして、気付くことで人は治る方へと自然と向っていく。それには無心で行うこと。(無心とは、する側もされる側も、「良くしよう」とか「治そう」という思いをなくすこと。)これはまさにヨガの考え方と同じと言えます。

教室で体調を崩されている方に対して、「良くなって欲しい」と一方的に思ってしまいがちです。(私だけかもしれませんが)「良くしよう」と思った時点で、それは無心かどうかというと、やはり無心ではなくて・・・。難しいことではありますが、その方自身の本来持っている力を信じて、無心でヨガを伝え行い、結果としてその方自身が良くなっていくことを願っています。

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2012年9月21日の感想

整体入門 野口晴哉

整体入門 野口晴哉
整体入門 野口晴哉 ちくま文庫

野口整体の創始者である野口晴哉先生が、初心者に向けてわかりやすく「野口整体」のポイントを解説しています。

この本を読むのは、2度目です。最初の数年前に読んだ時よりも、「なるほど」と納得しながら読むことができました。腑に落ちるというのでしょうか。再読したくなるタイプの本です。

西洋医学に慣れている方には、気というもののとらえ方など、疑問に思うかもしれません。しかし、ヨガを行っている皆様には、腑に落ちる点も多いのではないかと思います。体癖論、活元運動、愉気法、についても語っています。

<潜在している体力>
「表面に表われている体力だけが体力の全てではなく、潜在している体力も体力であることを自覚し、自発的に行為すれば、こういう力を活発に喚(よ)び起こすことができるのだ」(本より引用)
※こういう力とは、もともと自分が持っている自分で治る力

「病気になった時など、他人の知識や後援をあてにして、潜在的に持っている力を発揮しないで不平ばかり言っているようなことはおかしい。頼ることやすがることばかりを考え、他人の力をあてにしているから、自分の力が働かないのである」と耳が痛くなるような手厳しい言葉です。おっしゃるように、確かに私たちが忘れがちなことなのではないかと思うのです。

「病気になるのも、治るのも通して一つの自然の力です」とも語っています。

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2012年9月11日の感想

これ1冊できちんとわかるアーユルヴェーダ 西川眞知子

これ1冊できちんとわかるアーユルヴェーダ
これ1冊できちんとわかるアーユルヴェーダ 
西川眞知子 毎日コミュニケーションズ

アーユルヴェーダを学んでいくと、自分のタイプに合うことを取り入れたくなり、
生活全般に関して、やけに細かくなってしまい、
最後には「なんだか面倒だなぁ」となってしまいがちです。

ヨガに関しては面倒と思うことはないのですが、
マッサージの時のオイルは「~オイルを使用」とか、
「~体質には、この食材を使い、風味は~。おススメではない食材は~、風味は~。」、
「この時間の飲み物は~」「頭のマッサージの順番は、まず~、次に~、それから~」など制約がたくさんあるんですもの。

この本は、気軽に取り入れることができそうです。

アーユルヴェーダとは、「生命の科学」を意味します。
ヨガとは兄弟姉妹とも呼ばれ、ヨガのティーチャートレーニングなどでも学ぶもので、古代インドから伝わる伝統医学です。この本では医学の枠にとどまらず、心と体のバランスを整える生き方の知恵が紹介されています。

私たち個人が本来持っている本質、年齢に合った生活を送ることの重要性を説いています。
アーユルヴェーダの理論では、全てのものに、地、水、火、風、空という5つの自然エネルギーが働いていると考え、これらの5つのエネルギーのうち、地と水の組み合わせが「カパ」、火と水の組み合わせが「ピッタ」、風と空の組み合わせが「ヴァータ」と3つに本質が分けられます。(年齢、季節、時間、その時の体調や気持ちの変化に応じてこの本質は少し変わってきますし、混合型もあります。)

特別なマッサージサロンに行かなくても、ご自身によるマッサージ、食事法、呼吸法、ヨガ、生活習慣、自然のエネルギーを感じ取ることなど、ご自分の中のバランスを整えることに役立つ事柄が、わかりやすく載っています。写真がきれいなのも、いいですね。
皆様も、興味ございましたら、ぜひどうぞ。

2012年8月18日の感想

東京国際ブックフェア・電子出版EXPO 東京ビッグサイト2012

第19回東京国際ブックフェア・第16回電子出版EXPO、見て来ました。

皆様は電子書籍を読まれますか?ご興味はございますか?

電子書籍に対して、今まであまり好感を抱いていませんでした。なぜかと言うと、一つはネット上で本など商品を購入すると企業に自分の趣味を把握・管理される気持ちの悪さ、二つは昔ながらのアナログな紙が好き、だからです。

特に一つ目の、企業に自分の趣味を把握・管理されて、次回からは頼んでもいないのに「これがおススメ」とか「この商品はいかがでしょうか」などと表示されたり、別の関連企業からメールでそれらしき内容が勝手に届きます。少々うっとうしい。電子書籍を読むことはなさそうな。

今回話題になっている楽天のkobo(電子書籍を読む媒体です)を手に持ってみました。あまりにも軽くて、ちょっと驚きでした。サイズが大きすぎず、小さすぎず、程よい感じです。小説を読む時の文字は自分の好みでフォントやサイズの変更ができるようですし(おそらく他の媒体もそういった調節がきくのでしょうが)、漫画もずいぶんと見やすいのですね。

本は「紙媒体で読みたい派」(そんな派があるとしたら)なのですが、日々の電車や地下鉄などで、ものすごくブ厚くて重い本を持ち歩く場合は、こういうの楽でイイなと素直に思いました。とはいえ、紙媒体の出版の地味目なブースには心ひかれます。これからも頑張ってもらいたいなぁと強く思うのでした。

他に、漫画家、イラストレーター、絵本作家、写真家などのブースが、個人個人は小さいスペースながらも、パワーを感じました。学園祭のノリで楽しそう。

こうして少しづつ私たちの意識も変わり、電子書籍が普及していくのでしょうね。

はたして今年は電子書籍元年になるのでしょうか?皆様はどう思われますか?

tokyointernationalbookfair2012の1
盛況な会場、特に賑わっているブースがこちら

tokyointernationalbookfair2012の2
寝てました。皆に触られすぎて、疲れちゃったのかも

手塚治虫作品ラベル
好きな作品をオリジナルで製本してくれるようですよ

2012年7月6日の感想

追記 
10年後の2022年現在、電子書籍はもはや一般化しています。
街の本屋は少なくなり、Amazonで本・電子書籍を購入する人も多くなりました。
スマホ、PC、iPad、Kindleで読書する日がやってくるとは。
ただ私は相変わらず、街の本屋をみて回り、紙媒体の本で読むことが好きです。2022年10月27日

百鬼夜行抄 21巻 今市子

百鬼夜行抄21
百鬼夜行抄 今市子 朝日新聞出版

漫画雑誌「ネムキ」(元々は朝日ソノラマが「眠れぬ夜の奇妙な話」という名前で創刊)に連載。週刊でも月刊でもなく隔月刊なので、コミックがなかなか発売されず、それ故、コミック発売が毎回楽しみなのです。

そんな「百鬼夜行抄」、最新刊である21巻が発売されました。

主人公の飯嶋律は、祖父譲りの霊感があります。しかし見ることができるだけで、海外ドラマや少年漫画のヒーローのように霊や魑魅魍魎を退治することはなく、霊や異界を垣間見たり、そんな存在と心を通わせたりする物語です。干渉しすぎると事件に巻き込まれるので要注意なのですが、干渉しなくても成り行き、事件に巻き込まれることもしばしば・・・。ホラーといえばホラーなのしょうが、家族ドラマでもあり、ミステリーでもあります。

飯嶋律の祖父の飯嶋伶は、蝸牛というペンネームで怪奇幻想を題材にする小説を書いていました。この祖父がとても魅力的なキャラクターなのですよね。幸薄そうな(実際に幸薄い幼少期を過ごしました)細身、眼鏡、着物。これらにピンときたら、ぜひ。

こんなに大好きな作品ですが、夜中には怖くて読むことができません。
読むのは、お日様の出ている明るい時間帯ですね。
皆様も、気が向いたら、どうぞ異界へ。

文鳥様と私9

今市子さんと愛鳥たちとの日々を綴ったノンフィクションの実録漫画「文鳥様と私」は最高です。
芳文社などから出ている他の作品も、ひねりが効いて面白いですよ。

2012年7月3日の感想

追記
2022年10月現在、「百鬼夜行抄」30巻発売されています。
主人公の律はずっと大学生のままです。
どうか未完になりませんように。2022年10月26日記

華氏451度 レイ・ブラッドベリ:Ray Bradbury

訃報 レイ・ブラッドベリ:Ray Bradbury
アメリカ合衆国の小説家(SF作家、幻想文学作家、怪奇小説作家)、詩人。
2012年6月5日に91歳で死去。

学生時代に観たフランソワ・トリュフォー監督の映画作品「華氏451:Fahrenheit451」がレイ・ブラッドベリとの出会いだった気がする。

映画タイトルは「華氏451」、小説タイトルは「華氏451度」。
華氏451度とは、紙が自然発火する温度(華氏451度≒摂氏233度)とのこと。

それから、萩尾望都の漫画「ウは宇宙船のウ ブラッドベリSF傑作選」、
そしてオリジナルのレイ・ブラッドベリの作品へと辿りつきました。

「華氏451度」は、本を持つことや読書が禁じられた、未来の架空の管理社会の物語です。読書好きな人間にとって、また読書好きな人間でなくても、情報や思想が管理された世の中というのは非常に恐ろしく、そんな世の中にはなっちゃいけないと思ったものです。今も、人間の思考力、想像力、共感力、また多様な思想を絶つには、本を読まないことでしょう。受動的にテレビ(最近はネットでしょうか?)を見続け、いつしか支配されていくことへの警鐘。彼の作品は、今後も生き続けていくに違いありませんね。

ご冥福をお祈りしております。

fahrenheit451

フランソワ・ロラン・トリュフォー
François Roland Truffaut
1932年2月6日~1984年10月21日
フランスの映画監督、脚本家、俳優である。ヌーヴェルヴァーグを代表する監督の一人。

2012年6月22日の感想

音楽の在りて 萩尾望都

音楽の在りて、萩尾望都
音楽の在りて 萩尾望都著 イーストプレス

大好きな漫画家・萩尾望都先生の初の小説集です。
20代の頃「奇想天外」に掲載していたSF短編小説と中編小説。

「左ききのイザン」(「半神」に収録)のペアの作品となる「ヘルマロッド殺し」、
音楽家がとある星で遺跡発掘中に見つけたものとは・・・、
宇宙で出会った異星人と会話してみたら・・・、宇宙で難破船に遭遇し・・・、
少女時代の漫画を通じて人と繋がった話など。

「美しの神の伝え」(中編小説)

「神の存在と自我の芽生え」という作者の永遠のテーマ。
「理想的な人類を作ろう」とする過程の物語。
何かの神話を読んでいるよう。頭の中に絵が浮かんできます。

ちょうど「私を離さないで」と同じ頃に読み、
あまりにもシンクロしている部分が多くて。
20代のころから取り組んでいる望都先生の想像力に感服。

軽くて可笑しな作品、「そういうオチなのね」という作品、
神々しい重厚な作品まで、萩尾望都ワールドが広がり、楽しみ浸ることができます。
全てのストーリーが、望都先生の(自分の好きな頃の)漫画の絵として、
はっきり頭の中にイメージされるので、ちょっと普通の小説と違う、不思議な感覚。

代表作
「11人いる!」、「ポーの一族」、「トーマの心臓」、「百億の昼と千億の夜」
「メッシュ」、「銀の三角」、「モザイク・ラセン」、「マージナル」、「A-A’」、
「イグアナの娘」、「残酷な神が支配する」、「バルバラ異界」など

<関連記事>
Arco iris Yoga 2017年7月14日
萩尾望都 SFアートワークス→こちら

2011年11月2日の感想

わたしを離さないで カズオ・イシグロ

わたしを離さないで カズオ・イシグロ
わたしを離さないで
原題:Never Let Me Go
カズオ・イシグロ著(早川書房・ハヤカワepi文庫)

この作品は、「泣ける」というような単純なものではなく、
怒りがこみ上げるかというと、そういうわけでもなく、
タイトルから甘い恋愛物を想像してしまいそうですが、
SFのような、医療物のような、読む人により異なるであろう作品です。
あえてここで、ネタバレする気はありません。

こんな運命を受け入れる人生があっていいものかと。

この主人公キャシーは、激しく抗議することなく受け入れていきます。
ある意味「東洋的な人物だな」と感じました。

例えば、「こんな風に思った」けれど、周囲の人と浮いてしまうから
グレーのままにしておいて、言わないままでいる、とか。

カズオ・イシグロさんは日本で生まれた日系の英国人ですから
一般的な西洋的な考えと少し違うのかな。
また、ヨガでは「あるがままを受け入れる」という考え方がありますが
諦めたところで何か別のものが、別の視点がみつかるという考え方が
西洋も含めて広がり受け入れられているのでしょうか。

物語の中では、事細やかに彼女の過去の出来事が描かれる。
この細やかに描写された過去の彼女の記憶や経験。

ノーフォークにあるロストコーナー(遺失物取扱所)にあるかもれしないと
期待するもの、それは当然単なる品物ではなく、
それぞれが大切にとっておきたい記憶でしょう。

トミーとノーフォークの雑貨屋でカセットを探して回ったこと。
この記憶や経験は、けっして奪えないということです。

行き過ぎた医療の歪み、忘れ去られる存在であったとしても
忘れては、離してはいけないことがある。そんな風に静かに語りかけてくるから、
この物語が頭から離れなくなるのかもしれません。

2011年10月15日の感想

魂の処方箋 越智啓子 池川明

「おなかの赤ちゃんは、今どんなことを感じ、思っているのかしら」

そんな風に思ったとき、この本はいかがでしょうか。

2人のスピリチュアル・ドクターが聖地沖縄で語り合っています。お産に対する不安なことが頭をよぎるときにも、少し「ほっ」とできる、温かい気持ちになれる本ですよ。

越智啓子さんは、クリスタルヒーリング、笑い療法、過去生療法、ハンド&ヴォイスヒーリングなどを取り入れたユニークな治療を行っていらっしゃる精神科医です。
池川明さんは、「胎内記憶」(赤ちゃんはお母さんのお腹の中での記憶を持っています。また、いつも一緒にいるお母さんの気持ちをキャッチしているのです。)についての研究を行っていらっしゃる産婦人科医です。

<参考文献>
「親子を癒す子育てのヒント 子どもがあなたを選んで生まれてくる」越智 啓子
ソウルメイトだったかもしれない自分と親、自分と赤ちゃん・子ども。
関係を見直すきっかけに・・・。

2010年12月20日の感想